20年間あたためてきたこと

近隣の小学校と連携し、身近な野草観察実習から一泊二日の臨海学習まで様々な機会に同行し、事前学習としての出前授業も行ってきた。小学校高学年(5・6年生)の子どもたちの興味・関心を十分に満足させる自然体験学習の内容は、楽々と高校の教科書レベルを超えてしまう。子どもたちの好奇心は、高校生が「難しい」と言う高度な内容を「楽しく」感じて、やすやすと吸収してしまう。

適切な事前学習を行なったあとで、野外実習を行えば、子どもたちは個々の経験を組み立てて、自分なりの生命観・自然観、ひいては倫理観まで形成することができる。この時期に子どもたちの好奇心に応えることのできる、自然誌学習を行うことは学年・学級の崩壊した状態から、教育を再興する手段になりうるのではないか。自然と親しむ学びを、小学校段階でおろそかにすることは、自然観・人格の形成を妨げ、その後の子供たちの人生を危うくする可能性が高いのではないか。

そして、毎年6月に開催される天神崎自然観察会の講師を務めるようになった。小学校入学前の子どもたちとその保護者の皆さん、田辺市・南部町の中学生・高校生も集まってくれる。天神崎を未来の子どもたちに残すことが、ナショナルトラストの目的だった。今年、天神崎の自然を大切にする会は、創立50周年を迎える。