子どもたちのウェルビーイングを保障する学校教育
教育学者の溝上慎一さんのチャンネルの新着動画です、国家間の競争と各国の政策が子どもたちの教育に深く影響していることが平易に語られています。とても良い動画です、教育関係者だけでなく子育て世代の方々にも視聴いただけるといいと想います。
1. ブーカ(VUCA)が与える影響
ブーカ(変動性・不確実性・複雑性・曖昧さ)は、現代社会の急激な変化や予測困難な状況を指します。学校教育に対しては、主に「求められる能力の変容」という形で影響を与えています。
- 思考・判断・表現力の重視: コンピューターサイエンスの発展やグローバリゼーション、自然災害、生成AIの台頭など、複雑に絡み合う課題に直面する中で、自ら考え抜き、適切な判断を下し、それを他者や社会に発信する力が必要とされています。
- 日本の学習指導要領への反映: このブーカ・ワールドに対応するため、日本の学習指導要領でも「思考・判断・表現」が重要な力として位置づけられています。
2. ジェーム(GERM)が与える影響
ジェーム(Global Education Reform Movement:世界教育改革運動)は、1990年代から世界を巻き込んだ教育改革の動向を指します。学校教育に対しては、「競争と標準化」という形で影響を与えました。
- 国際学力テストによるランキング化: PISAやTIMSSなどの国際的な学力テストの結果により、国家間や地域間で学力ランキングが発表され、比較競争が激化しました。
- 教育の標準化とテスト対策: 特定の教科(数学・理科・読解など)の成績向上に投資が集中し、標準化テストへの対応そのものが教育の目的となってしまう事態を招きました。
- ウェルビーイングの置き去り: テスト対策に焦点が当たりすぎることで、子供たちのウェルビーイングや、教育プロセスにおける人間関係、相互作用といった重要な側面が軽視される「学習化(ラーニフィケーション)」の問題が指摘されています。
3. 両概念の狭間での「ウェルビーイング」の台頭
現在の学校教育は、この「複雑なブーカ」と「競争的なジェーム」の狭間にありその中で改めて浮上してきたのが「ウェルビーイング」です。
- 教育の目的の再定義: 競争やテストの結果だけを追い求める(ジェームの影響)のではなく、不確実な世界(ブーカの影響)で子供たちがより良く、幸せに生きるためにはどうすればよいかを考えることが、教育の大きなテーマとなっています。
- コロナ禍による顕在化: コロナ禍で学校が休校した際、孤独や学習課題に追われる子供たちの姿を通して、これまでジェーム的な教育の中で「見て見ぬふりをされてきた」子供たちのウェルビーイングの欠如(イルビーイング)が浮き彫りになり、その保障が急務であると認識されるようになりました
