国際バカロレアの世界
私はEnvironmental Systems and Societiesを担当している、4月の授業開始前の3月に4週間かけて、英語でのOnline Workshopを受講し、課題を読み、レポートを提出し、他の受講生への助言もこなして、やっと担当教員として認証された。英語で修士論文を書いたのと同じくらいの専門的知識・英語力が必要なレベルだった。
Environmental Systems and SocietiesのCourse Bookはもちろん英語で書かれている。内容は生態学・環境科学・環境政策におよび、そのレベルは大学の教科書レベルだった。Course Bookの8つのTopicsを学びながら、生徒たちはこの教科での課題論文(Internal Assessment)作成に向けて、自分の課題・研究計画を立案する。
国際バカロレアのプログラムでは教員が生徒を「指導」することはほぼ不可能で、野外でのテータの取り方、データの統計的処理の方法、作業仮説について生徒とフラットに議論した。生徒がもっている世界観・価値観を尊重するには、教員の世界観・価値観も個人的なものであるという認識に立たねばならなかった。
課題論文(Internal Assessment)そのものと、評価基準(Criteria)による評価結果を、厳重な管理もとで個々の教員がIBに提出する。これが評価の1/3を占める。残りの2/3はExternal Assessmentというペーパーテストの得点による。Paper1 は1時間、Paper2には2時間かけて取組む。すべての教科のExternal Assessmentが終わるまで3週間、生徒たちは耐える。
Paper2のSectionBは4問中2問を選択して、エッセーを書く。自分の価値観だけでなく、反対の立場にも幅広く言及しながら、適切な結論を導き出す事が求められる。採点基準は明確であるが、正解はない。自己の立場をもれなく説明しながら、異なる立場の発現に耳を傾け妥当な結論を示す、これが国際バカロレアの求める学力なのだ!
大学入試共通テストで高得点を取って、日本の大学に進学する生徒と、国際バカロレアのDPプログラムでもまれた生徒では、もっている学力の質が根本的に異なる。大学に進学してから、世界に認められる英語論文を書いたり、複雑な利害関係が絡み合う国際社会の前線に立って力を発揮できるのはどちらだろうか?