「写真」を通して自己肯定感を向上するPBC

Photo Based Communication(PBC)とは

近年、国際的な調査において日本の子どもの自己肯定感の低さは、長年の教育課題となっています。「ありのままの自分を認める」という感覚は、多くの子どもたちにとって容易なことではありません。

これまで教育現場では、作文や絵画といった表現活動を通じて自己肯定感を育む試みがなされてきました。しかし、こうした活動は個人のスキルや過去の経験による差が顕著に表れやすく、苦手意識を持つ子どもにとっては、かえって自信を損なう障壁となってしまう側面がありました。(フリースクール「ゆかない」でも絵画を描いています)

そこで今、新たな解決策として注目されているのが、本格的な一眼レフカメラを用いた教育プログラム「フォト・ベースド・コミュニケーション(PBC)」です。

Weekend Academyでは一眼レフカメラボディ三台と交換レンズ8本を生徒用に提供しております。

写真が教える自己受容の極意

心理学者のローゼンバーグ(Rosenberg, 1965)は、自尊感情(自己肯定感)には2つの側面があると提唱しました。一つは他者と比較して優越感に浸る「とてもよい(Very good)」という感覚。そしてもう一つは、他者との比較ではなく「これでよい」と自分なりの満足を得る「Good enough」の感覚です。

写真という媒体は、この「Good enough」の感覚を得るのに非常に適しています。絵画や文章のようにゼロから作り出す苦労がなく、すべての参加者が「横一線」のスタートラインに立てるからです。この「Good enough」自己肯定感は次のように定義できます。「ありのままに自分自身を受け容れ、その価値や存在を肯定的に認識する感覚」

写真は、被写体を選択し、シャッターを切るというシンプルな行為を通じて、この「ありのままの自己受容」を強力にサポートしてくれるのです。

本物の機材が「自信」に火をつける

PBCプログラムでは、あえて子どもたちに本格的な一眼レフカメラを一人一台手渡します。この「本物の機材」を使う体験が、子どもの内発的動機づけを劇的に高めます。

一眼レフ特有の「ファインダーを覗く」という行為には、心理学的に重要な意味があります。広い世界から特定の被写体を選び取ることで、普段は周囲に埋没している「地」の中から、自分の心が動いた対象を「図」として浮かび上がらせる効果があるのです。このプロセスが「発見」を容易にし、特別なスキルがなくても「誰もがある程度美しい写真を撮影できる」という成功体験を生み出します。

調査によれば、校内の自然を撮る「発見」プログラムにおいて、ある小学校では児童の参加満足度は100%を記録しました。また、撮影された写真そのものへの満足度も約76%(75.9%)と高く、自分でも驚くような作品が撮れたという実感が、揺るぎない自信の種となっていることがわかります。

言葉にできない心の扉を開く

一般に男子は女子に比べて言語による自己表現を苦手とする傾向があります。しかし、写真は「非言語的な自己表現」の代替手段となります。言葉で自分を語ることが難しくても、視覚を通じて自分の興味や関心を他者に伝えることができるのです。

一方で、女子児童においては異なるメカニズムが示唆されました。女子の場合、他者理解が促進されるほど自己肯定感が向上する傾向が見られたのです。親密な友人の視点や世界観が自分と類似していることを写真を通じて確認し、価値観を共有・承認し合うことが、安心感や自己受容へとつながっています。